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▼AISに関する論文の紹介 その2

【論文名】来島海峡における特殊航法(順中逆西)の航行傾向について
【著者】 要木 香苗

来島海峡は瀬戸内海に位置し、強い潮流と狭く湾曲した水道のため、航海の難所として知られている。 また、海上交通安全法により、「順中逆西」という、特殊な交通ルールが定められている。 来島海峡で の海難の発生状況を時間別にみると、夜間に全体の約9割が発生していた。また、500トン未満の小型船での発生が多くなっていた。 そこで、AISを利用して特殊状況下における船舶の航行状況を明らかにすることを目的とした。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/180/0/180_KJ00008159706/_pdf

【論文名】日本周辺主要海域のAISデータの現状 : 関門海峡および周辺海域
【著者】 酒出 昌寿

AIS(Automatic ldentificationSystem;船舶自動識別装置)は、船舶の船名、位置、針路、速力、目的地などの情報をVHF帯の電波に乗せて 周辺を航行する他船や陸上施設などに知らせる装置であり、海域を航行する船舶を自動的に識別することが可能である)。 このAIS(クラスA)の搭載対象船舶は、2000年改正SOLAS-V章19規則で規定され、2008年7月1日以降、全ての旅客船、300総トン数(以後、GTとする) 以上の国際航海に従事する船舶、500GT以上の国際航海に従事しない船舶への搭載が義務づけられている。
2008年7月の義務化以降、約5年が経過した現在、船舶運航の実務者からは、AIS運用方法の改善などに対する意見はあるものの、 安全運航の観点から当システムに高い関心を持ち、その有効性についても一定の評価をしている 。
海上保安庁ではAIS搭載の進展を受け、2010年7月に港則法および海上交通安全法の一部を改正し、AISによる船舶の「長さ」情報を活用することで、 管制船が管制水路を航行する場合であっても反航する船舶(管制対象船)の航行を一律に制限するのではなく、すれ違う船舶同士の長さに応じて一定の長さ 以下の管制対象船の航行を認めるという効率的な交通整理を実施している。
以上のように我が国の船舶運航、通航管制などの現場において、船舶運航、海上交通の安全の観点からAISの有効性が認められ、当システムが活用されている。 さらに、このように有効性が認められたAISを搭載義務船舶以外にも広く普及させていくことを目的に、より低価格で機能を抑えた簡易的なAIS(クラスB)も開発、 市販され、小型船舶などへの搭載が望まれている。一方、今後のAISの更なる高度利用に向けた課題などについても議論や検討が行われている。
  海上交通工学ならびに各種の船舶航行安全対策の検討分野においても、海域の海上交通環境の実態の把握、分析にあたり、AISから得られる情報の利用が提案され、 それら情報の利用が普及してきている。 海上交通工学の研究分野では、個々の船舶の操船や航行の実態分析や海上交通の場における操船困難性の評価などへの応用が報告されている。 船舶航行安全対策の検討分野においては、これまで主に目視やレーダ観測にて得てきた海域の船舶通航実態の情報の一部をAISから得られる情報により入手して その作業を軽減化するとともに、これまでの手法では入手困難であったような情報も入手、活用ができることとなった。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/188/0/188_KJ00009379946/_pdf

【論文名】AIS規準の動向
【著者】 矢内 崇雅

1.はじめに
IMO決議MSC74(69)Annex3における性能要件(Performance Standards)とITU−R M.1371−1(Reeommendation)による技術基準に準拠して、 2002年7月1日からのSOLAS条約の対象船舶に搭載が義務付けられるクラスAAISと称される船舶搭載用のAIS装置の国際規格がIEC TC80にてIEC61993−2 Class A shipborne equipment of the Universal Automatic Identification Systemとして2002年12月に制定された。
  本AISはUTC時刻を規準に時分割方式(1分間を2250スロット/周波数に分割し、原則放送方式にて規定された情報を送受信する) をベースにしたデータ伝送方式であり、船舶、陸上局の区別無く通信が出来ることから、国際的な機関が関連して全体的な要件即ち、
   1.IMO:性能要件の策定
   2.ITU−R:機能要件の策定
   3.IEC:テスト要件の策定
   4.IALA:運用要件の策定
の分担にてそれぞれの作業が推進され、船舶搭載のクラスAAISのIEC(lnternational Electro−technical Committee>の国際規格が発刊される時点では ひとまずIMO及びITU−Rにおける要件策定の作業は終了したことになっており、現在はIECとIALA(lnternational Association of Marine Aids to Navigation and Lighthouse Authorities)での作業が活発に推進されている。これはAISがSOLAS船舶搭載に限らず非SOLAS船舶向けAIS装置、 陸上設置のAIS装置及び航路標識設備向けのAISとしての応用があり、AISを利用した船舶識別、航行安全への寄与と最近では安全保障の観点からも AISの利用が適しているとして国際規格、ガイドイン等の作成が急がれている理由である。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/160/0/160_KJ00005002138/_pdf

【論文名】速吸瀬戸におけるAISおよび船舶事故記録による通航状況調査
【著者】  佐藤 白馬

1.はじめに
  科学の発達した現代でも様々な分野で大きな事故が発生している。 海上交通においても通航調査等を通じ、その安全性を常に維持し、向上していかなければならない。
  船舶通航の安全性の維持向上のための基礎資料とするため、AISを使用して通航状況の調査を行うとともに、 海難審判所の裁決録から同海域の海難事故の実態を調査し比較検討することで本海域の通航状況を分析し、またAIS非搭載船(500総トン未満の船舶) に着目しAISを活用する上での問題点を探ることを主たる目的とする。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/180/0/180_KJ00008159694/_pdf

【論文名】日本沿岸域AISに対する二項分布を用いた信号受信確率の推定
【著者】 瀬田 剛広、松倉 洋史、荒谷 太郎、田村 兼吉

1.はじめに
AIS(Automatic ldentification System、船舶自動識別装置)は船舶の航海に関連したデータを無線で通信し、安全な航海を行うための仕組みである。 併せて、通信されるAISデータは船舶の動きに関するデータを持つことから、海上交通の様々な分析に用いられている。
分析にはAISデータを収集する必要があるが、船舶から送信されたすべてのAIS信号が受信される訳ではない。 送信元船舶と受信機との距離や複数の信号の混信などにより、受信されない信号が発生する。船舶はAIS信号を繰り返し送信するため、 これは通常間題にはならないが、受信失敗が連続した結果、存在したがデータに残らなかった船舶が存在すれば、分析に影響が生まれかねない。 より正確な分析のためには、AIS信号の受信確率、あるいは船舶の検出確率を把握することが望ましいといえる。
特に最近利用の始まった衛星AIS(人工衛星によるAISデータ収集)では、ふくそう海域で船舶検出確率が大幅に 低下することが確認されており、 この間題が重要となっている。これに対し、Setaらは二項分布を用いた船舶検出確率の推定手法を提案した。この手法は衛星AISを対象として開発されたものであるが、 主要なアイデアは沿岸AIS(衛星AISに対する概念としての沿岸でのAISデータ収集)にも適用可能なものであった。 特に沿岸AISでも船舶の受信確率の特に低い海域で有用性が期待出来る。 そこで、本研究では衛星AIS用に開発されたAIS信号の受信確率推定法を沿岸AISに利用可能とする方策を議論する。 この手法開発により沿岸AISに対して新たな知見を得ることを目指すとともに、衛星AISに比べ情報の多い沿岸AISで手法を評価することで、 衛星/MSに対する手法としても更なる改良を行うことを日指す。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/195/0/195_KJ00010235931/_pdf

【論文名】港湾管理におけるAISの有効利用について
【著者】 村井 宏一

1.はじめに
AIS(Automatic ship Identification System:自動船舶識別システム)は、船舶の信号符字および船名等の静的航海情報、船舶の位置、 針路および速力等の動的航海情報および航行目的地およびETA(Estirnated Time of Arrival:入港予定日時)等の航行関連情報を自動的に送受信するシステムである。 そして、2002年7月1日以降に建造される新造船についてはその対象船舶に、現存船については船種および総トン数に応じた段階的な搭載が行われる。
AISの船舶情報(以下、AIS情報と呼ぶ)の利用は、船舶の航行安全を主に支援するための高精度な情報提供源として、船長・航海士、 水先人および海上保安庁等により多分野にわたる研究が行われている。 しかしながら、地方自治体等が管理する港湾管理業務に視点をおいたAIS導入の利用については、まだ提案されていない。
本論では、海上輸送と陸上輸送の境界線に位置する港湾を管理している港湾管理業務におけるAIS情報の有効利用方法についての提案を行う。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/156/0/156_KJ00005002012/_pdf

【論文名】Class-B AISの紹介とAISの将来展望
【著者】 荻野 市也

1.はじめに
AIS(Automatic ldentification System;船舶自動識別装置)は、航海の安全と船舶通航業務(VTS)の運用改善を目的に、2000年のSOLAS条約 (Safety Of Life At Sea:海上における人命の安全のための国際条約)改正により2002年7月1日以降の新造船から装備が義務化された装置である。 義務装備のAISはClass−A AISと呼ばれ、全ての旅客船と300GT以上の国際航海船と500GT以上の内航船が対象で、 2008年7月1日までに既存船も含め全ての対象船で装備が完了している。
今回紹介するClass−B AISは義務装備対象外の船舶にAISを普及させることを目的に国際規格が制定された装置である。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/182/0/182_KJ00008275716/_pdf

【論文名】Class B AISの実用性と普及に関する考察
【著者】 山下 和雄、若林 伸和、渡邊 貴幸

1.はじめに
AIS(Automatic ldentification System= 船舶自動識別装置)は2002年から2008年まで既存船も含め順次、船舶への搭載が義務化され、 現在はその移行期間も終了している。 国内では船舶設備規程により国際航海に従事する旅客船、国際航海に従事する300総トン以上の全ての船舶および国際航海に従事しない500総トン以上の全ての 船舶に搭載が義務付けられている。AISはVTS(Vessel Traffic Service)での利用や海上交通解析のデータ収集などの他、船舶運航において、 TT(Target Tracking)レーダーと同様の種類の情報であるターゲットの針路、速力、CPA(Closest Point of Approach:最接近距離)、 TCPA(Time to CPA:最接近時間)などに加え、船名、IMO番号、船の長さ・幅、船の種類、喫水、仕向港、ETA(Estimated Time of Arrival:到着予定時刻)、 航海状態など操船判断の材料となる様々な情報を得る手段として用いられている。
航行するすべての船舶にAISが搭載されていれば、小型船舶も含めてレーダーでの情報が得にくいような場合でも、 AISによって船舶の存在や動静を確認できる可能性があり、安全性は向上すると考えられる。しかし、現状では装置が高価なことなどから、 義務のない小型船や漁船、プレジャーボートなどで任意に搭載している船舶は非常に少ない。 搭載義務のある船舶向けの装置をClass Aと呼ぶのに対して、義務の無い小型の船舶に対しても任意での搭載を容易にするため、 機能を簡略化したClass Bという 種類の簡易型AISが規定された。Class B AISは具体的な製品が利用可能となり、日本でも入手可能となり 船舶所有者がその有効性を認識して費用をかければ搭載することができる。
Class B AISを利用する船舶を主にその用途から大まかに分類すれば500トン以下の内航や外航でも300トン以下の小型貨物船など、同じく小型の漁船、 そして搭載義務に達しない規模のヨット、モーターボ ートなどのプレジャーボートの3つになろう。本稿では、おもにプレジャーボートを対象として Class B AISの普及に向けた実用性を考えるとともに、小型船舶が多く集まるヨットハーバーに出向いて小型船舶におけるAISの普及度合や 小型船舶を操船する者のAISに関する知識や意識などについて調査を行った結果を考察する。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jin/127/0/127_KJ00008274994/_pdf

【論文名】海上保安庁におけるAISへの取り組みについて
【著者】 松本 勇

1.はじめに
船舶識別と位置情報を得ることを目的として1990年代初頭頃より国際航路標識協会(IALA )を中心に開発が始められたAIS (Ship−borne Automatic ship Identification System: 船舶自動識別システム)は、1995年にスウェーデン及びフィンランドから、時分割多元接続(TDMA ) 方式(現在、搭載義務船舶への設置が進んでいる方式)が提案され、国際海事機関(IMO )の審議・勧告を経て現在に至っている。 AISは、船舶間において各種の情報を送受信することにより衝突予防等海上交通の安全に貢献するのみならず、船舶通航業務(Vessel Traffic Service:VTS) に導入することにより船舶動静情報に基づき船舶への各種支援情報を陸上側からリアルタイムで提供する機能も有している。 このため、海上保安庁では船舶輻輳海域に設置された海上交通センター等への整備を進めている。 また、今後は全国の特定港(港則法に規定される港)等への整備を行い、得られたAIS情報を港湾管理者へ配信する等、 海上交通の安全の他に物流の効率化への貢献も期待される。
本稿は、2003年度秋季日本航海学会、海上交通工学研究会で行った講演からAISの概要及び課題並びに当庁における整備計画の概要等をまとめたものである。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/160/0/160_KJ00005002140/_pdf

【論文名】海上保安庁におけるAISを活用した航行支援
【著者】 道辻 尋史

1.はじめに
海上保安庁では、海難の発生を未然に防止し、船舶交通の安全を確保するため、船舶の交通ルールの立案・運用、灯台等の航路標識の設置、 安全な航行に必要な情報提供など、様々な業務に取り組んでいます。
特に船舶の通航量が多い海域には、海上交通センターを設置し、海上交通に関する情報提供と交通ルールに基づく航行管制を一元的に実施しています。
一方、2002年7月から、自船の位置、針路、速力、船名などの情報を自動的に送信し、また自動的に他船、陸上局から情報を受信して各船舶を追尾するとともに、 安全に関する情報などのデータ交換を行うAIS(自動船舶識別装置)の搭載が始まり、 搭載義務船舶への搭載期限である2008年7月1日を間もなく迎えようとしています。
当庁では、船舶交通の安全性と効率性を更に向上させるため、東京湾海上交通センターにおいて2004年7月からAISを活用した次世代型航行支援システムの運用を開始し、 順次、各海上交通センターに整備を行い、本年度大阪湾海上交通センターで運用を開始することにより、 全国7箇所の海上交通センターすべてにおいて運用することとしています。
海上交通センターへのAISシステム導入については、日本航海学会誌(平成16年6月・第160号)に記述されているので、 本稿では海上交通センターの役割とAISを活用した業務・海難防止事例等について紹介することとします。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/167/0/167_KJ00004845401/_pdf

【論文名】AISを用いた航行船舶の入出港時の航路遵守に関する調査
【著者】 塩谷 茂明、瀧林 佑哉、高 欣佳、若林 伸和

 船舶の航海において、海上交通の安全性確保を図ることを目的に、様々な海事法規が規定されている。特に、沿岸海域で、船舶の輻輳度が高く、 狭隘な海域である東京湾、伊勢湾、大阪湾及び瀬戸内海等は、航行船舶が過密状態となり、衝突及び乗揚等の海難発生の危険性が高い。 その中でも、港に入出港の際、操船者の緊張感が高まり、最も危険度が高くなる。
港の中でも特定港では、港内における船舶交通の安全及び港内の整頓を図る目的で、港則法で「特定港に出入りし、又は特定港を通過するには、 国土交通省の定める航路によらなければいけない。」と制定されている。
本研究の目的は、入出港時の船舶が港則法に定められた航路を正しく航行しているかの実態調査を、AISデータを用いて行うことである。 このような詳細な調査はこれまで実施されてこなかった。調査結果より、今後、法規制の遵守の徹底、指導及び改良点等を検討する上での情報提供を処する。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/69/2/69_I_622/_pdf

【論文名】AISデータを用いた津波の早期検知・通報システムの構築に関する研究 -船舶挙動解析による津波の検知
【著者】 牧野 秀成

本研究は船舶の航行データであるAISデータを利用することで大津波来襲を早期に把握し、それを陸上に通達するシステムの構築を目的とした研究である。 通常、日本沿岸を航行する船舶は沖合10km~30kmの海域を航行しており、その多くが自船の情報を他船に通知することを目的とした自動船舶識別装置 (Automatic Identification System:以後AISとする)の搭載を義務付けられている。 津波来襲時、最も早くその影響を受ける巨大構造物は沖合いを航行している船舶群であり、それらが影響を受けた情報をいち早く陸上に伝達できれば 時間的な猶予が確保できるため、沿岸地域の人々の避難や防災・減災対策はより安全な方法を選択し実行することが可能となる。 このように、本研究では日本の沿岸を航行するほとんどの船舶がすでに搭載しているAISの発展的使用として、 それらを津波の検知センサの如く使用することで大津波来襲を早期に検知し、その情報を陸上に伝達するというこれまでにない斬新かつ 効果的なシステムの構築を目指す。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/70/2/70_I_984/_pdf

【論文名】大規模AISデータを用いた統計分析
【著者】 小葉 武史、若林 伸和

1.はじめに
船舶自動識別装置(以下AIS)は、船舶同士の衝突予防、特定海城における通過船舶とその積荷情報の把握および船舶運航管理業務支援のため、 一定の要件を満たす船舶にその搭載が義務付けられる装置である。AISは、船舶の固有情報(識別番号、船名、船種等)や航海情報(位置情報、針路、速力等) を自動的かつ周期的に、VHF無線により周辺の他船や陸上施設に向けて送信する。 2002年のSOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)以降、我が国でも、順次AIS搭載義務対象船舶が拡大され、2008年7月1日までに、 300総トン以上の外航船舶と500総トン以上の内航船舶にAISを搭載することが義務化された。
AIS搭載義務化の主な日的は船舶同士の衝突予防であるが、AISデータが持つ以下の性質は当該データが学術目的の利用にも優れた性質を有していることを示す。 すなわち、第一に船舶のリアルタイムの動向を把握できるデータであること、第二に集計データではなく個票データであること、 第三に搭載義務を満たす船舶については全数調査であること、第四に主観変数を含まない客観データであること等である。AISデータの蓄積が進むにつれ、 これらAISデータが持つ有用性は大規模データを用いた統計分析へ向けての大きな可能性を秘めていると言える。
AISの搭載要件が拡大されるにつれて、これらのAISデータが持つ有用性に注目し、安全性を評価する研究、交通流を把握する研究等が蓄積されつつある。 本稿では、蓄積が進む大規模なAISデータを活用した統計分析について拙著の既刊論文を概観するとともに、 大規模AISデータを活用する場合の注意点と今後の研究展望を述べる。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/175/0/175_KJ00007064076/_pdf

【論文名】AIS装置の概要
【著者】 小林 英一

1.はじめに
2002年7月1日より義務搭載装置としてAISが導入されてから約1年以上が経過し、搭載船も増えてきており、 東京湾にて受信出来る船舶数も50隻程度は観測できる状態となって来た。本年末の搭載期限までにはその数倍に増えることが予想される。 しかし、AISは今までにない新しいシステムであることから、装置メーカーではそのシステムプロトコル仕様の解釈や性能要件達成に向けた新技術開発において 多くの困難を克服しなければならなかったと共に、ユーザーである船の乗組員においても有効な運用方法が未だ不明確な状態で運用しているのが実状である。
ここでは、AISのシステムの理解を深めるために、導入の歴史から装置の概要及びその基本的な運用方 等について紹介する。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/160/0/160_KJ00005002139/_pdf

【論文名】AISを活用した船舶の通航実態の把握に向けて
【著者】 山田 多津人

1.はじめに
港湾や航路整備等、様々な事業の実施や施策を実現するために、海上交通に関する安全性評価が行なわれている。 このような評価を行なうためには、対象となる海域の交通現象を把握(調査)することが必 要不可欠である。 特に、対象海域の通航船、操業漁船、錨泊船等の状態を把握するために、レーダや目 による実態調査が実施されることが多い。 しかしながら、調査の実施やデータの解析には多大な労力を必要とし、また、所要の調査精度を確保するためには熟達した観測員の手腕によるところも大きい。 方AISは、従来知ることができなかった船の情報を比較的簡易な受信機で取得することが可能であり、実態調査のための新たな手段となるものと期待される。 本稿では、日本沿岸の主要海域で、段階的にAISの搭載が義務化される船舶が、全通航船に対してどの程度の割合となるか等、 海上交通実態調査と港湾統計のデータを使って推定を試みたので紹介する。


出典元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinnavi/160/0/160_KJ00005002141/_pdf